皆さんこんにちは、代表の上口稚洋です。
営業秘密の漏えいは、企業にとって大きな経営リスクです。
なかでも多いのが、従業員による不正や不注意など、内部リスクによる漏えいであることをご存じでしょうか。
IPA(情報処理推進機構)が発表している「情報セキュリティ10大脅威」によると、内部リスクによる情報漏えいは10年連続でトップ10に入っており、多くの企業にとって喫緊の課題であることが分かります。
この記事では、営業秘密を守るために押さえるべきポイントを整理し、Microsoft Purviewを活用した具体的な対策方法を分かりやすく解説します。
参考資料:情報セキュリティ10大脅威 2025
営業秘密とは

営業秘密とは、企業にとって非常に重要な、決して外部に漏れてはならない情報のことです。
ここではどのような情報が営業秘密に当てはまるのか、3つの要件と、その保護の重要性について解説します。
営業秘密の3つの要件
営業秘密は、「秘密管理性」「有用性」「非公知性」という3つの要件を満たした情報を指します。
以下で、3つの要件を分かりやすくまとめました。
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どのような情報か |
具体例 |
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秘密管理性 |
秘密として管理されている情報のこと |
パスワードで保護されたデータや「社外秘」と明記された文書など |
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有用性 |
企業の事業活動に役立つ技術・営業上の情報のこと |
製造ノウハウ、顧客リスト、新規事業計画など |
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非公知性 |
一般には公開されていない情報のこと |
社外に知られていない技術情報や経営方針など |
これらの条件を満たすことで、不正競争防止法による法的保護を受けられ、万が一漏えいや不正利用があった場合には、民事・刑事の両面で対応可能です。
営業秘密を保護する重要性
営業秘密は企業の信頼と競争力を支える「情報資産」であり、その保護やリスク管理が非常に重要です。
その理由は3つあります。
- データやノウハウの価値が高まり、利用方法が多様化しているため
- 技術や業務の高度化により、秘匿すべき情報が増えているため
- 終身雇用の崩壊で人材の流動性が高まり、退職者を通じた漏えいリスクが増えているため
もし営業秘密が不正に持ち出されれば、企業の信頼や市場での競争力に深刻なダメージを与えかねません。
そのためにも、日常的に適切な管理体制を整え、漏えい防止策を徹底することが企業に求められます。
営業秘密が漏えいする主な原因は内部リスク

営業秘密の漏えいと聞くと、外部からの不正アクセスやサイバー攻撃を想像しがちです。
しかし実際には、社内に潜む「内部リスク」が大半を占めています。
IPAが2020年に行った調査によると、営業秘密漏えいの原因で最も多いのは中途退職者による漏えい(36.3%)です。
次に多いのは現職従業員の誤操作(21.2%)やルールの不徹底(19.5%)で、日常業務の中で起こるヒューマンエラーが大きな割合を占めていることが分かりました。
さらに 金銭目的などの意図的な漏えい(8.0%) や、契約終了後の契約社員による漏えい(1.8%)も報告されています。
このように、営業秘密の漏えいは自社の従業員や退職者など、内部リスクによって発生しているケースが圧倒的に多いです。
アクセスログを残す、違反者を罰する、といった対症療法では不十分であり、組織として根本的な管理体制を構築することが求められます。
内部不正については以下の記事で詳しく解説していますので、参考にしてください。
>>内部不正とは?よくある手口と企業が取るべき5つの防止策を徹底解説
参考資料:https://www.ipa.go.jp/files/000089191.pdf
営業秘密を守る体制構築 × Microsoft Purview

内部リスクによる漏えいが多い現状を踏まえると、営業秘密を守るには多面的な体制づくりが必要です。
そのカギとなるのが、 Microsoft Purview(マイクロソフト パビュー)です。
PurviewはMicrosoft 365に統合された情報保護・コンプライアンス基盤であり、その機能を組み合わせることで営業秘密を守る体制を構築できます。
ここからはその具体的な活用方法を紹介します。
持ち出し困難化
営業秘密が一度でも社外に流出すれば、その被害は甚大です。
だからこそ「情報をそもそも持ち出せない状態にする」ことが重要です。
Microsoft Purviewでは「情報保護ラベル」やIRM(情報権限管理)を使って、ファイル自体に暗号化を施せます。
さらに自動分類機能により「社外秘」や「Confidential(機密)」といったキーワードを含む文書を検出し、即座に暗号化することも可能です。
これにより、USBコピーやメール転送で社外に情報が出てしまっても、権限のないユーザーは開くことができません。
つまり、物理的な持ち出し制限に近い効果を得られます。
接近の制御
営業秘密を守るもう一つのポイントは「アクセスできる人を最小限にすること」です。
Microsoft Purviewでは部署・役職単位で細かなアクセス権限を設定できます。
さらに、条件付きアクセスを組み合わせることで「社外からのアクセスは禁止」「私物デバイスからは閲覧不可」といった制御も可能です。
また、DLP(データ損失防止)機能を使えば「Highly Confidential(極秘)」のラベルが付与されたファイルは社外送信を自動でブロックするなど、実運用に即した柔軟なポリシー設定もできます。
結果として、営業秘密に接触できる従業員を必要最小限に絞り込み、漏えいリスクを最小化します。
視認性の確保
営業秘密を守るために大切なのは、従業員に常に「これは重要な情報だ」と意識させる仕組みを整えることです。
Microsoft Purviewは、文書やメールに対して「Confidentia」「Highly Confidentia」といったラベルを自動で表示し、利用者に情報の重要度を可視化します。
さらに、社外秘の資料を外部に送信しようとすると警告を表示することも可能です。
またOCR(光学式文字認識)と連携すれば、スキャンしたPDFや画像の中に含まれる「社外秘」の文字も検出できます。
この機能を活用することで認識漏れを防ぎ、誤送信や不正利用を阻止します。
秘密情報に対する認識向上(言い逃れの排除)
営業秘密を扱ううえで大切なのは、「知らなかった」では済まされない環境をつくることです。
そのためには、従業員に情報管理の責任を明確に意識させる必要があります。
Microsoft Purviewには、「誰が、いつ、どの情報を利用したか」を可視化し、利用状況を自動的に記録する監視ログ機能があります。
常に「行動が記録されている」と従業員に意識付けることにより、抑止力が働き「言い逃れ」を許さない体制が構築できます。
信頼関係の維持・向上
営業秘密を守るためには、働きやすい環境づくりも欠かせません。
たとえば、従業員同士の円滑なコミュニケーションや、公平な人事評価は、会社への信頼感や満足度を高めます。
こうした職場の環境づくりに加え、Microsoft Purviewのような情報保護ツールを活用することで、従業員は安全な環境で安心して業務に取り組めます。
Microsoft Purviewなら、不審なアクセスや情報の持ち出しが発生した場合も早期に検知できます。
結果として、従業員の安心感や組織全体の信頼性が向上し、取引先や顧客にも「情報を大切に扱う企業」という信頼を提供できる体制を整えることができます。
より詳しいMicrosoft Purviewについては、以下の記事をご覧ください。
>>Microsoft Purviewとは?データセキュリティを支える3つの柱と導入メリット
まとめ
営業秘密の漏えいは、企業の競争力を奪い、場合によっては存続を揺るがすものであり、その多くは内部リスクに起因しています。
だからこそ、社内規程や研修といった運用面の整備に加え、Microsoft Purviewのようなツールを活用した技術的な防御が欠かせません。
社内の部署が連携し、秘密情報の「管理」「監視」「可視化」を徹底することで、漏えいを防ぐと同時に、企業価値と信頼を守ることができます。




