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情報漏えいによる損害賠償の実態とは?相場と事例まとめ

皆さんこんにちは、代表の上口稚洋です。

近年、企業の情報漏えい事故が相次ぎ、損害賠償請求にまで発展するケースが増えています。

「万が一漏えいが起きたら、どれくらいの損害賠償を請求されるのだろう?」

そんな不安を感じている方も多いのではないでしょうか。

この記事では、情報漏えいによって企業が負う損害賠償の相場や、実際の事例、そして企業が取るべき対策についてわかりやすく解説します。

情報漏えいで発生する損害賠償について

「個人情報が漏れたら、企業は必ず損害賠償を支払うのか?」

そう疑問に思う方は多いかもしれません。

実は、個人情報保護法には「損害賠償」に関する明確な規定はありません。

実際に損害賠償が求められるのは、「プライバシーを侵害された」などの民法上の不法行為責任(民法709条)や、秘密保持契約違反など契約上の債務不履行が根拠となるケースがほとんどです(民法415条)。

つまり、個人情報保護法に違反したという理由だけで、必ずしも賠償義務が発生するわけではないのです。

情報漏えいで損害賠償が発生するケース

先述した通り、企業が情報漏えいを起こしても、必ず損害賠償が発生するわけではありません。

しかし、民事上の責任として、損害賠償の支払いを命じられる場合もあります。

ここでは、どのようなケースで損害賠償が発生するのかを解説します。

企業側に故意、または過失がある場合

企業に故意や過失があると認められた場合、損害賠償の責任が発生します。

たとえば、適切なセキュリティ対策を取らずに個人情報を管理していたり、ウイルス対策ソフトの更新を怠っていたようなケースが該当します。

こうした管理の不備は、個人情報保護法や契約上の「安全管理義務」に違反しているとみなされます。

安全管理義務とは、個人情報を漏えいや紛失、改ざんから守るために、企業が整えておくべき管理体制のことです。

この義務を怠って情報漏えいが発生した場合には、民法上の不法行為責任に基づき、損害賠償を求められることになります。

なお、2022年に改定された個人情報保護法では、個人情報が漏えいし、その経緯や取扱・対応に落ち度があることが発覚した法人に対する罰金は1億円以下です。

漏えいによって被害者に損害が発生した場合

実際に被害者に損害が生じた場合、企業は損害賠償責任を負うことになります。

たとえば、漏えいした情報が悪用され、迷惑メールが届いたり、詐欺やなりすまし被害に遭った場合などが該当します。

ただし、漏えいが確認されたとしても実際の被害がない場合には、賠償額が少額にとどまる、または請求自体が認められないこともあります。

契約違反や秘密保持義務違反があった場合

情報漏えいが契約違反や秘密保持義務の違反によって発生した場合にも、損害賠償責任が問われます。

たとえば、業務委託契約で「個人情報を適切に管理する」と定めていたにもかかわらず、その義務が守られなかったときは、民法上の「債務不履行責任」に基づき損害賠償が請求されます。

また、秘密保持契約を結んでいた場合でも、契約の範囲を超えて情報を扱ったり、十分な管理がされていなかった場合は契約違反となり、同様に法的責任を負うことになります。

契約内容は、損害賠償の有無や金額を決める重要な根拠となるため、契約締結時点から厳密に対応することが求められます。

【注意】行政処分や刑事罰の対象になる場合

情報漏えいが発生し、企業が法令に違反していた場合は、損害賠償だけでなく行政処分や刑事罰を受ける可能性も否定できません。

たとえば、企業の情報管理が不適切だと疑われた場合、個人情報保護委員会が立入調査や報告を求めることがあります。

このとき、正当な理由なく協力を拒んだり、虚偽の報告を行ったりした場合には50万円以下の罰金が科される可能性があります(個人情報保護法182条)。

さらに、委員会からの是正命令に従わず違反を続けた場合には、1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されることもあります(同法178条)。

情報漏えいによる損害賠償の相場はいくら?

情報漏えいが起きた際の損害賠償額は、漏えいした情報の内容や被害の有無、企業の対応によって大きく変わります。

ここでは代表的なケースごとに、損害賠償の相場を紹介します。

一般的な連絡先情報のみの漏えい

氏名・住所・電話番号など、一般的な連絡先のみが流出した場合は、損害賠償額は1人あたり3,000円〜5,000円が目安です。

一般的な連絡先のみの場合は、漏えいしてもすぐに深刻な被害にはつながりにくいため、賠償額も比較的低く設定される傾向があります。

ただし、漏えい人数が多ければ数千万円規模の損害になることもあり、企業にとっては十分にリスクのある金額といえます。

センシティブ情報や二次被害がある漏えい

漏えいした情報に、病歴・信用情報・家族構成など秘匿性の高いセンシティブ情報が含まれていた場合、損害賠償額は1人あたり約3万円前後が相場です。

実際に詐欺やなりすましといった二次被害が起きた場合は、被害の深刻さが認められ、さらに高額な賠償が認定されるケースもあります。

また、漏えい後の企業対応が不誠実だと裁判で不利に働いてしまうため、賠償額が上乗せされる事態になりかねません。

クレジットカード情報の漏えい

クレジットカード番号・有効期限・セキュリティコードなどが漏えいした場合は、1件あたり約10万円が損害賠償の相場とされています。

これらの情報は第三者に悪用されるリスクが極めて高く、実際に不正利用されてしまうケースも少なくありません。

そのため、カード情報の漏えいはとくに深刻なインシデントとみなされ、賠償額も高額になる傾向があります。

実際に損害賠償が発生した3つの事例

情報漏えいにより、企業や自治体が損害賠償を命じられたケースは少なくありません。

ここでは、代表的な3つの事例を紹介します。

事例1:ベネッセコーポレーション

まず紹介するのは、2014年に発生したベネッセコーポレーションの大規模な情報漏えい事件です。

この事件では、業務委託先の元社員による不正な持ち出しにより、約4,858万件の顧客情報が流出しました。

漏えいした情報には、氏名・性別・生年月日・住所・電話番号・メールアドレスに加え、保護者や子どもの情報、さらには出産予定日など、非常に多くの個人情報が含まれていました。

東京地方裁判所は、被害者1人あたり3,300円の損害賠償、総額で約1,300万円の支払いをベネッセに命じました。

ベネッセは顧客対応や信頼回復のための費用として、約260億円もの特別損失を計上。

経済的・社会的に大きな影響を及ぼした事件となりました。

事例2:エステティックTBC

次に紹介するのは、エステティックサロンTBCのWebサイトで、約5万人分の会員情報が流出した事件です。

漏えいした情報には、氏名・住所・職業・電話番号・メールアドレスのほか、アンケートの回答内容や希望するエステコース名など、個人の関心に関わるデータまで含まれていました。

事件発覚後、TBCは速やかにサーバーから情報を削除しましたが、一度流出したデータの完全な回収は不可能でした。

その結果、迷惑メールの送信など二次被害が発生しています。

裁判では、原告13名に対して1人あたり35,000円、別の1名には22,000円の損害賠償が命じられました。

事例3:自治体

最後に紹介するのは、1998年に京都府宇治市で発生した情報漏えい事件です。

この事件では、約21万件の住民基本台帳データが漏えいし、名簿業者に販売されたことが判明しました。

これを受け、住民たちは国家賠償法および民法の不法行為責任に基づき宇治市に損害賠償を請求。

裁判所は、宇治市に対し1人あたり慰謝料1万円と弁護士費用5,000円の支払いを命じました。

損害としては、プライバシー権の侵害による精神的苦痛や、情報が完全に回収されていないことへの不安感が認定されています。

この事件は、自治体の情報漏えいに対して損害賠償が認められた日本初の判例として、現在でも重要な前例とされています。

情報漏えいによって発生するその他のコスト

情報漏えいによる損失は、損害賠償金だけではありません。

顧客対応・企業イメージの低下・業務停止など、目に見えにくいコストも多く発生します。

そのため、損害賠償を含むトータルコストを正しく把握することが、企業にとって重要です。

原因の調査やシステム復旧にかかる費用

漏えいが発生すると、まず必要になるのが原因の特定と範囲の調査です。

調査は外部の専門機関などが行うため、調査費用は高額になる傾向があります。

また、問題となった経路の遮断や、システムの復旧・再構築にも大きな費用がかかります。

加えて、再発防止のためのセキュリティ強化費用も必要となり、企業にとっては大きな負担となります。

クレーム対応やコールセンター運営費

情報漏えいが明らかになると、顧客や取引先への通知と謝罪が欠かせません。

新聞広告やWebでの謝罪文掲載、ダイレクトメールの送付など、対応コストは一気に膨らみます。

さらに、専用のコールセンターを新たに設置するケースも多く、その運営費用に数百万円から1,000万円以上がかかることがあります。

信用低下による売上減少

情報漏えいが原因でサービスが一時停止すると、その間の売上が減少します。

さらに、顧客の信頼を失うことにより、顧客や取引先から契約の見直しや打ち切り、サービス解約が相次ぐことが考えられます。

情報漏えいによる損害賠償に備えるには?

万が一、損害賠償に備えるには、事前の対策が不可欠です。

ここでは、企業が取り組むべき予防策として、セキュリティ対策・社内教育・初動対応フローの整備について解説します。

セキュリティ対策を徹底する

まず基本となるのは、情報セキュリティの強化です。

アクセス権限を必要最低限に制限し、情報への不正アクセスを防ぎます。

また、強力なパスワード管理、VPN(仮想プライベートネットワーク)の利用、多要素認証の導入も効果的です。

とくにリモートワークが一般化した今、どこからでも安全に業務を行う環境づくりが重要です。

こうした基本的な対策を日常的に見直し、継続して実施することが、情報漏えいリスクの大幅な低減につながります。

セキュリティ対策については以下の記事を参考にしてください。

>>情報漏えいを防ぐには?リモートワーク時代の必須セキュリティ対策7つ

社員教育とルールの徹底

情報漏えいの多くは、人為的ミスやルール違反によって起こります。

そのため、全社員に対する情報セキュリティ教育や定期的な訓練が欠かせません。

また、ノートパソコンやUSBメモリなどの社外持ち出しを原則禁止とし、やむを得ない場合は上司の許可や暗号化を必須とするルールを設けましょう。

さらに、ChatGPTやCopilotといった生成AIの業務利用についても注意が必要です。

これらは便利な反面、使い方を誤ると情報漏えいリスクを高める可能性があります。

具体的なガイドラインを整備し、社員に周知することが重要です。

社員教育については以下の記事を参考にしてください。

>>AIによる情報漏えいの原因と対策!CopilotやChatGTP、主要AIごとのリスクも解説

>>いまさら聞けない標的型メール訓練とは?実施の流れと効果を高める3つのポイントを解説

情報漏えいが起きたときの初動対応フローを整備する

情報漏えいが発生したときは、初動の速さと正確さが被害の大きさを左右します。

そのため、事故発生時に備えた対応フローの整備が重要です。

具体的には、あらかじめ社内の連絡体制や初動対応マニュアルを作成し、以下のような対応手順を明確にしておきます。

  • 誰が責任者となり指揮をとるか
  • 対応チームのメンバーは誰か
  • 被害の拡大を防ぐための緊急措置
  • 情報漏えいの範囲や原因の把握
  • 顧客や関係者への報告・情報共有の方法

これらを事前に定めておくことで、社内の混乱を防ぎ、被害を最小限に抑えることができます。

損害賠償が発生しないケースもある

すべての情報漏えいにおいて、必ずしも損害賠償が発生するとは限りません。

以下のようなケースでは、法律上、賠償責任を問うことができない場合があります。

公益通報に該当する場合

情報の漏えいが「公益通報」として認められた場合、漏えいした本人に損害賠償責任を問うことはできません。

これは、公益通報者保護法という法律に基づくものです。

この法律は、企業や団体の違法行為などを通報した人が、報復などの不利益を受けないよう保護するための制度です。

つまり、社会の利益を守る目的で行われた通報については、たとえ情報が漏えいしていたとしても、民事上の責任は免除されます。

実際の被害が発生していない場合

情報漏えいがあったとしても、実際に被害が発生していない場合は、損害賠償が認められないことがあります。

たとえば、クレジットカード情報が外部に流出したものの、不正利用などの実害が確認されなかったケースでは、賠償の対象外と判断される可能性もあります。

損害賠償が成立するには、「被害者に具体的な損害が発生していること」が必要条件の一つです。

そのため、漏えいの事実だけでは不十分であり、「どのような実害があったか」が非常に重要なポイントとなります。

ただし、一定の条件が必要ですが、実際の被害がなくても、漏えいによる精神的苦痛を理由に慰謝料が認められるケースもあります。

情報漏えいの損害賠償に関するよくある質問(FAQ)

ここからは、情報漏れに関する損害賠償のよくある質問を紹介します。

Q1:漏えいの原因が外注先だった場合、責任はどこにある?

情報漏えいの原因が外注先(委託先)であっても、発注元(委託元)企業も損害賠償責任を負う可能性が高いです。

これは、民法715条の「使用者責任」や、監督義務違反に基づき、委託先の不正行為に対して委託元が責任を問われる裁判例が多いためです。

また、個人情報保護法第25条では、委託元に対し「必要かつ適切な監督義務」が課せられています。

そのため、実際の責任は委託元がどれだけ適切な管理・監督を行っていたかによって判断されます。日頃からしっかり管理体制を整えることが重要です。

Q2:1件でも情報漏えいがあったら損害賠償になるか?

1件の漏えいでも、損害賠償責任が発生する可能性はあります。

被害者はプライバシー権の侵害を理由に損害賠償を請求でき、慰謝料が認められた判例もあります。

賠償額は漏えいした情報の内容や被害の程度によって異なりますが、一般的には1人あたり数千円から数万円程度が相場です。

Q3:顧客から訴えられたらどう対応すればよいか?

まずは、裁判所から届いた訴状や書類をよく確認し、請求内容や理由を正確に把握しましょう。

その後、自社内で事実関係を調査し、証拠や資料を整理します。

そして、できるだけ早く弁護士などの専門家に相談し、法的なアドバイスを受けることが重要です。

答弁書を作成し、裁判所の指定する期限内に提出する必要があります。

また、当事者間での話し合い(任意交渉)や和解も可能ですが、その際は必ず書面に記録を残してください。

まとめ

情報漏えいによる損害賠償は、企業の過失や故意、被害者の実際の損害発生、契約違反などが原因で発生します。

賠償額は漏えいした情報の種類や被害状況によって変わり、一般的な連絡先情報の漏えいでは1人あたり数千円程度、センシティブ情報や二次被害がある場合は数万円になることもあります。

また、損害賠償以外にも、調査費用や信用失墜による売上減少など、大きなコストがかかるため、企業は情報漏えい対策が欠かせません。

企業はセキュリティ対策や社員教育、初動対応のマニュアル整備などでリスクを軽減しましょう。

万が一のときは、速やかに専門家と連携して適切に対応することが重要です。

参考記事:経済産業省第6章 漏えい事案への対応  

                     サイバーセキュリティインシデントが発生したら?

     個人情報保護委員会FAQ索引 

     個人情報の保護に関する法律

     日本経済新聞

     日経クロステック

     情報セキュリティ大学院大学

     公益通報者保護制度の概要と 実務上の留意点

     wikibooks 

     個人情報の保護に関する法律

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当社はゼロトラストネットワークを基本に、標的型攻撃訓練から内部不正検知をコンサルティングから導入、SOC、サポートまでワンストップでご提供します。

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近年では、生成AIの利用に特化した機能を備えたものが増えています。 たとえば、以下のような機能を持つ製品があります。 プロンプト入力時に機密情報を自動で検知・ブロック ログイン時に社内ルールを通知するポップアップ表示 管理者が入力内容をリアルタイムでモニタリングできるダッシュボード こうしたツールを活用すれば、ヒューマンエラーによる情報漏えいリスクを大幅に軽減できます。 さらに、ブラウザ版のCopilotを使う場合は、DLP(データ損失防止)設定やウイルス対策ソフトの導入も必須です。 DLPによって送信データの監視・制御が可能になり、不正アクセスや意図しない社外送信のリスクを抑えることができます。 Copilot・ChatGTP・Gemini、主要生成AIごとの情報漏えいリスク 日本で広く使われている生成AIには、Microsoftの「Copilot」やOpenAIの「ChatGPT」、Googleの「Gemini」などがあります。 これらは設計や運用方針、学習データの扱い方がそれぞれ異なるため、情報漏えいのリスクもAIごとに違います。 そのため、これまでに説明した4つの原因に加え、利用するAIの特徴に合わせたリスク管理も重要です。 ここでは、代表的な生成AIごとに起こり得る情報漏えいのリスクについて解説します。 Copilot(Microsoft 365) Microsoft 365 Copilotを利用する際の最大のリスクは、情報保護ツールと連携しないことで機密情報が漏れてしまう点です。 とくに、「Microsoft Purview」の秘密度ラベルや暗号化機能を使わない場合、Copilotはセンシティブな情報を通常のデータと区別せずに扱ってしまいます。 そのため、重要な機密情報が誤って文書やチャットの応答として外部に出力される危険性が高まります。 Copilotの情報漏えいリスクを抑えるには、Microsoft Purviewなどの情報保護機能と連携が不可欠といえます。 >>Microsoft Purviewとは?データセキュリティを支える3つの柱と導入メリット ChatGPT(OpenAI) ChatGPTの無料版や個人向け有料版では、入力した内容がAIの学習データとして使われるリスクがあるため業務利用には向いていません。 実際にOpenAIも利用規約でも、機密情報や個人情報を入力しないよう明記されており、情報の取り扱いには十分な注意が求められます。 一方、ChatGPTのエンタープライズ版(またはTeam板)では、学習の無効化やログ管理、権限設定が可能で、セキュリティ面が強化されています。 社外秘情報や顧客データを扱う場合は、ビジネス向けプランの導入が推奨されます。 Google Gemini Google Geminiは、Googleアカウントとの連携やクラウド上でのデータ管理が特徴です。 しかし、この利便性の高さが、情報漏えいのリスクを高める要因になります。 とくに注意すべきなのは、個人のGoogleアカウントと社内アカウントとの境界が曖昧になりやすい点です。 たとえば、従業員が誤って個人アカウントで業務データを扱うと、そのデータが企業の管理外に出てしまい、アクセス制御が効かなくなることも考えられます。 Google Geminiを業務で活用する際には、アカウントの厳格な管理とクラウド設定の見直しが不可欠です。 Claude AI(Anthropic)など Claude AIをはじめとする海外製AIツールでは、「データ使用許諾」が利用規約に含まれていることが多く、情報漏えいのリスクが高いです。 海外製AIツールはグローバルな基準で設計されているため、データの利用方法や保存先が日本の法規則と異なる場合があります。 そのため、重要な機密情報や個人情報を入力すると、意図せず第三者に利用されたり海外に送信されたりするリスクが潜んでいます。 利用前に規約の内容を細かく確認し、自社のセキュリティポリシーと照らし合わせたリスク評価が不可欠です。 まとめ 生成AIは業務の効率化や情報整理において強力なツールですが、同時に情報漏えいリスクにも十分な注意が必要です。 とくに、個人情報や機密情報を取り扱う企業では、利用ツールの選定や社内ルールの整備が不可欠です。 機密情報を入力しない、履歴や学習設定を適切に管理する、法人向けプランを活用するといった基本的な対策を徹底することで、情報漏えいのリスクを大きく軽減できます。 さらに、Copilot、ChatGPT、Geminiなどの生成AIは、それぞれ異なるリスクとセキュリティ仕様を持っており、導入前にはデータの取り扱いやアカウント管理体制をしっかり確認することが求められます。 組織全体でセキュリティ意識を高め、継続的に見直しと改善を行うことが、安全かつ効果的なAI活用の鍵といえるでしょう。

生成AIのセキュリティリスクとは?企業が取るべき6つの対策をわかりやすく解説

近年、生成AIは業務効率化やアイデア創出に欠かせないツールとなっています。 ソフトバンクグループも10億のAIエージェントを作って活用するとも発表していますよね。 しかし、その便利さの裏には情報漏えいや誤情報、著作権侵害といったセキュリティリスクが潜んでいることをご存じでしょうか。 本記事では、企業が生成AIを安全に活用するために押さえておきたいリスクの種類と対策、さらに導入時のガイドラインについて解説します。 安心してAIを活用するためのポイントを、ぜひ押さえてください。 生成AIにおけるセキュリティリスクとは 生成AIを業務に取り入れると多くの利点がありますが、一方で見落とされがちなセキュリティ上のリスクも存在します。 情報漏えいのリスク 生成AIに入力した情報は、意図せず外部に漏れるリスクがあります。 その理由は、生成AIはクラウド上で動作しているため、入力されたデータがサーバーに保存されたり、生成の学習に使われたりする可能性があるからです。 もし、未公開の製品情報や顧客リスト、経営戦略などの機密情報を入力すると、その情報が第三者に再現されたり、外部へ流出したりする危険があります。 実際に、生成AIに入力した情報が漏えいしてしまった事例があります。 これは、2023年に韓国のテクノロジー企業・サムスンに務めるエンジニアが、開発中のコードをAIに入力してしまい、そこから情報漏えいした可能性があるという事件です。 「自分しか見ていないから大丈夫」と考えず、常に情報が外部に渡るリスクを意識しましょう。 生成AIによる情報漏えいの事例は、以下の記事で詳しく紹介しています。 >>AIによる情報漏えいの原因と対策!CopilotやChatGTP、主要AIごとのリスクも解説 誤情報(ハルシネーション)による業務トラブル 一見すると正確に見える生成AIが作成した文章ですが、必ずしも事実に基づいているとは限りません。 生成AIの回答はインターネット上にある膨大な情報をもとに生成されますが、その中には、裏付けのないまま「それらしく」作られた誤情報が含まれることがあります。 これを「ハルシネーション」と呼びます。 たとえば、製品マニュアルや社内資料を生成AIだけで作成すると、誤情報が掲載されたり、手順ミスによって作業遅延が発生したりするおそれがあります。 このように、ハルシネーションによって「存在しない事実」「間違った情報」が盛り込まれると、業務トラブルへ発展するリスクが高まります。 業著作権・知的財産権のリスク 生成AIが作成したコンテンツには、知らないうちに著作権を侵害してしまうリスクがあります。 たとえば、有名なイラストや曲に似ていたり、意図せず再現されたりする場合があります。 最近では、ChatGTPの画像生成で「ジブリ風の画像」が作れると注目を集め、「法的に大丈夫なのか」「倫理観が問われる」と話題になりました。 生成AIは、WEB上にある大量の文章や画像、コードを学習します。 その学習データに著作権で保護された素材が含まれていると、結果が既存の作品と酷似することがあるのです。 実際、企業が生成AIで作成したコンテンツを業務利用したことで、損害賠償や信用低下につながったケースもあります。 対策としては、著作権フリーあるいは適法なデータのみで学習した生成AIを選ぶこと、利用規約・ライセンスの確認すること、そして人によるチェックや専門家のレビューを行うなどの仕組みを導入することが重要です。 サイバー攻撃のリスク 生成AIの進化により、フィッシング詐欺などのサイバー攻撃がより巧妙化しています。 従来のフィッシングメールは、不自然な日本語や怪しい文面から詐欺であると見破られることが多くありました。 しかし、生成AIを使えば、誰でも簡単に自然で信頼性の高い文章を作成できます。 昨今では、AmazonやApple、クレジットカード会社などの有名ブランドを装った「なりすましメール」が急増しており、利用者の心理的な隙を突いて情報を盗み出そうとします。 さらに、攻撃者が日本語を話せなくても、生成AIを使えば高品質な詐欺メールを大量に作成できるため、個人情報や社内アカウントが狙われるリスクは一層高まっています。 企業が取るべき6つの生成AIセキュリティ対策 生成AIを安全に運用するためには、具体的な対策が不可欠です。 ただし、ここで紹介する6つのセキュリティ対策は、それ単体では十分な効果を得られません。 複数を組み合わせる、または6つすべてを取り入れることで、情報資産を守るバリケードとなります。 1.ガイドラインの策定 生成AIを安全に活用するには、明確なルールを定めたガイドラインの策定が欠かせません。 ルールが曖昧なままだと、社員が知らないうちに機密情報を入力したり、不適切な使い方で情報が漏れてしまうおそれがあります。 そこで、利用範囲や禁止事項、情報の取り扱い方法、著作権への配慮などを具体的に盛り込んだ利用規約やガイドラインを整備しましょう。 これらは社内ポータルなどで常時閲覧できるようにし、定期的な更新も行います。 さらに、新入社員研修で必ずガイドラインの内容を説明し、ルールの背景や重要性を理解させることが、組織全体のリスク低減につながります。 2.社員のセキュリティ教育 生成AIのリスクを防ぐには、策定したガイドラインを正しく理解し実践できるようにするための社員教育が重要です。 たとえば、生成AIの仕組みやメリットだけでなく、情報漏えいのリスクや著作権の問題、関連する法律や倫理的な課題についても学べる機会を設けましょう。 特に、生成AIが悪用されやすいフィッシング詐欺やソーシャルエンジニアリングなどの手法については、具体例を交えながら周知徹底し、不審なメッセージや指示に対して冷静に対応できる力を育てます。 こうした取り組みが、企業全体のセキュリティレベルを底上げするカギとなります。 最近では、社員教育の一貫として、標的型メール訓練を取り入れる企業が増えています。 標的型メール訓練の流れや得られる効果などは、以下の記事で詳しく解説していますので参考にしてください。 >>いまさら聞けない標的型メール訓練とは?実施の流れと効果を高める3つのポイントを解説 3.プロンプト監視とログ管理を導入する 生成AIを安全に運用するためには、入力内容や利用履歴を記録・監視するシステムの構築が欠かせません。 なぜなら、「誰が・いつ・どのような情報を入力したか」を把握できれば、誤入力や不正利用を早期に発見できるからです。 たとえば、機密情報や個人情報の誤入力を防ぐには、DLP(データ損失防止)ツールの導入や入力前のチェックリスト活用といった技術的・組織的対策が有効です。 また、生成物についても公開前に事実確認や著作権・倫理面のチェックを行うことで、トラブルを未然に防げます。 さらに、定期的にログを確認し、異常な挙動や不適切な利用がないかを監視することが、企業のセキュリティ強化へつながります。 4.Microsoft Purview DSPM for AIでAI利用のリスクを可視化・管理 Microsoftには、生成AIを安全に活用するためのセキュリティツール「Microsoft Purview Data Security Posture Management (DSPM) for AI」があります。 この仕組みを利用すると、CopilotやChatGPTなどの生成AIを通じて扱われるデータを自動的に検出・分類し、機密情報が漏えいする危険がないかを可視化できます。 DSPM for AIには、複雑な設定なしのワンクリックで効果を発揮するセキュリティポリシーが用意されています。 どの従業員が、どのAIサービスに、どのようなデータを入力しているのかをレポート化できるため、「AIの見える化」と「自動防御」を同時に実現できるのが特徴です。 DSPM for AIを活用すれば、企業はAI利用によるデータ流出のリスクを事前に把握し、問題が起きる前に検知・修復する仕組みを構築できます。 つまり、AIを安全かつ効率的に活用したい企業にとって、DSPM for AIは今後欠かせないセキュリティ基盤といえます。 5.アクセス制御とデータ暗号化 生成AI環境の安全性を保つには、アクセス権限の適切な管理とデータの暗号化が重要です。 まず、「誰に、どの範囲の権限を与えるか」を明確にし、業務に必要な最小限の権限だけを付与します。 これにより、不正利用や情報の持ち出しリスクを大幅に減らせます。 また、入力データや作成したコンテンツは暗号化して保存・送信することで、外部からの盗み見や改ざんを防止できます。 とくにクラウド上で生成AIを利用する場合は、通信経路の暗号化や暗号鍵の適切な管理が欠かせません。 一方で、アクセスの仕組み自体を強化する方法として有効なのが「Azure AD 条件付きアクセス(Microsoft Entra ID 条件付きアクセス)」の導入です。 ユーザーのデバイス、場所、アプリ、リスクレベルなどの情報をもとに、アクセスを自動的に制御できます。 たとえば、社外からのアクセス時のみ多要素認証を求めるなど、リスクに応じた柔軟なポリシー設定が可能です。 データを守る「暗号化」と、アクセス経路を守る「条件付きアクセス」は、それぞれ役割は異なりますが、どちらも安全なAI環境を実現するうえで欠かせない対策です。 両者を組み合わせることで、より強固なセキュリティ体制を築くことができます。 6.アカウントの制御と監視 生成AIを安全に活用するには、アカウント制御・監視も欠かせません。 業務用と個人用のアカウントを分けて分け、利用者ごとに明確に管理することで、公私混同による情報漏えいを防げます。 さらに、「誰が、いつ、どのように使ったか」を追跡・把握する仕組みを整えれば、不審な操作や不正アクセスの早期発見にもつながります。 先述したアクセス制御が「権限を与える前の防御」であるのに対し、アカウント制御と監視は「利用中・利用後の異常を検知する防御」です。 この2つを組み合わせることで、より強固なセキュリティ体制を築くことが可能です。 個人ができる生成AIセキュリティ対策 生成AIは便利な一方で、個人の使い方次第で情報漏えいやトラブルを引き起こすリスクもあります。 企業側の対策だけでなく、利用者一人ひとりがリスクを正しく理解し、安全な使い方を意識することが大切です。 ここでは、個人が日常的に徹底すべき運用ルールを紹介します。 機密情報・個人情報を入力しない 氏名や住所、電話番号、メールアドレス、クレジットカード情報など、個人を特定できる情報は絶対に生成AIに入力してはいけません。 もちろん、会社の機密情報や取引先の重要データも同様です。 これらは生成AIの学習やサービス提供企業のサーバーに保存される可能性があり、入力すれば情報漏えいのリスクが高まります。 安全に利用するために、機密情報や個人情報は慎重に取り扱いましょう。 内容のファクトチェック 生成AIが出力する情報には誤りや偽情報、偏った内容が含まれることがあります。 生成AIは大量のデータから「もっともらしい」文章を作りますが、その正確性は保証されません。 回答をそのまま信用せず、必ず複数の信頼できる情報源を確認する習慣をつけましょう。 サービスの利用規約・プライバシーポリシーの確認 生成AIを使う前には、必ずそのサービスの利用規約やプライバシーポリシーを確認しましょう。 特に、入力した情報の取り扱いや、学習データとして再利用されるかどうかは重要なポイントです。 サービスによっては、ユーザーの入力内容を今後の学習に活用する場合があり、知らないうちに機密情報を提供してしまう恐れがあります。 不明点や不安がある場合は利用を控え、信頼できるサービスを選びましょう。 公私のアカウント・端末を分けて使う 生成AIを使用するときは、業務用と個人用のアカウントや端末を分けて使うべきです。 これは、従業員一人ひとりが守るべき運用ルールです。 もし業務情報を私用のアカウントに入力してしまうと、意図せず情報漏えいが発生するリスクがあります。 特に同じ環境で公私混同すると、管理が曖昧になりやすく、セキュリティ事故の原因となりがちです。 安全な運用のために、アカウントや端末を明確に分け、情報の扱いをきちんと区別しましょう。 生成AI導入時のガイドライン策定ポイント 生成AIガイドラインとは、AIの利用や運用に関する倫理的・技術的・法的なルールや、推奨される運用方法をまとめた指針です。 企業は生産性の向上を目指しながらも、情報漏えいや誤情報の拡散といったリスクを最小限に抑える必要があります。 国内では、以下のような公的・業界団体による指針がすでに公開されています。 デジタル庁「テキスト生成AI利活用におけるリスクへの対策ガイドブック(α版)」 一般社団法人ディープラーニング協会「生成AIの利用ガイドライン」 情報処理推進機構(IPA)「テキスト生成Ai導入・運用ガイドライン」 これらを参考にしつつ、自社の業務内容や方針に合わせたガイドラインを策定・運用することが重要です。 なお、情報漏えいが起きた際の損害賠償については、以下の記事を参考にしてください。 >>情報漏えいによる損害賠償の実態とは?相場と事例まとめ まとめ 生成AIの導入は業務効率化を大きく進めますが、その一方で情報漏えい、誤情報、著作権侵害、サイバー攻撃といった多くのセキュリティリスクを伴います。 企業には、明確なガイドライン策定や社員教育、プロンプト監視、アクセス制御とデータ暗号化、アカウント制御・監視といった対策をしっかり講じることが求められます。 こうしたリスクに対応するには、自社だけでなく専門組織によるセキュリティ監視を取り入れることも有効です。 アイネットテクノロジーズが提供する「Modern SOC Service」は、お客様環境のMicrosoft 365における脅威対策や各種アラートに、24時間365日体制で対応するサービスです。 誤検知の有無や影響度を判断し、想定される被害と対応策まで通知します。 さらに、MSOCによる内部不正検知では、退退職予定者の行動を調査・分析し、情報流出につながる「接近・入手・隠蔽・流出」といった行動をスコアリングすることで、情報漏えいリスクから企業を守ります。 生成AI導入に伴うセキュリティリスクを最小限に抑えるために、SOCサービスの導入をぜひご検討ください。 >>Modern SOC Serviceの詳細はこちら

Copilot の利用要件が大幅に緩和されました

皆さん、こんにちは。 アイネットテクノロジーズ 上口裕樹です。 皆様は普段、生成AIをどの程度業務で利用していますか? 生成AIというキーワードそのものはそれなりに知られていると思いますが、本格的な普及はまだまだではないでしょうか。 そんな生成AIですが、2024年は飛躍の1年になるのではという声が世界中から聞こえてきています。 現在、生成AI は大きく、ChatGPT/OpenAI , Copilot/Microsoft , Google Bard/Google の 3つが主に注目されていますが、 今回はタイトルにある通り、Copilot 利用要件緩和についてお話したいと思いますが、そもそも Copilot とはなんでしょうか? Copilot とは、要約すると Microsoft が提供している人工知能型チャットサービスです。 当社でもCopilot 導入しているため実際に聞いてみました。 解説は上記の通りですが、最近大きな発表がありました。それが、利用要件の大幅な緩和です。 ご存じの方も多いかとは思いますが、これまで商用版の Copilot 利用には Microsoft 365 E3 or E5 / 300ライセンス 以上の保有が必要でした。 Copilot の 価格は現在、約¥3,750 ユーザー/月(年間契約)なので、300ライセンス分を購入するとなると結構な費用になるかと思います。 Copilot for Microsoft 365についてはこちら https://www.microsoft.com/ja-jp/microsoft-365/business/copilot-for-microsoft-365#Pricing なんと、この最低購入数が、1ユーザーから購入可能に変更となりました! また、Office 365 E3 or E5 保有でも利用可能になったということで、Microsoft 365 E3 以上の保有が必須ではなくなりました。 Copilot は 注目度は高かったものの、購入要件が厳しいと批判的な声があがっていたため、要望に応じて要件を緩和したのでは?と推察されています。 この発表を受けて当社も導入に踏み切りました!! 現在、M365 Apps との統合機能や Microsoft 365 Chat など、実証実験中です。 こちらについても少し情報がまとまったら、改めて情報発信したいと思います。 Copilot 導入検討されている方や、ご興味をお持ちの方、是非一度ご連絡ください。 株式会社アイネットテクノロジーズ info@inet-tech.jp

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